Wix Vibeを実際に使ってわかったこと「生成AI時代の“サイト構築”がここまで変わる」
- 平川 亮二

- 19 時間前
- 読了時間: 8分
2025年現在、Wixは「Wix Vibe」という新しいAIサイトビルダーをベータ版として公開しています。WixerDesignでも実際に触って検証を続けていますが、プロとして確信したのは、“AIでサイトを作る”という体験が本当に実務レベルに入ってきたということ。

この記事では、以下の構成で整理します。
① 公式情報に基づく「Wix Vibeとは何か・何ができるか」
以下は Wix 公式ヘルプセンター/開発者ドキュメント/公式発言に基づく“事実”のみを記述しています。
1-1. Wix Vibeは「AI × コード生成 × Wix機能統合」の新しいサイト構築環境
Wix Vibe は、自然言語のチャット操作でサイトを作成・編集できるAI搭載のエディタです。公式ドキュメントでは以下の特徴が明記されています。
● AIチャットでサイトの生成と編集ができる
AIチャットボットに指示するだけで、サイト構造・デザイン・コンテンツが生成される
生成後も、チャット経由で追加編集ができる
● フロントエンドは Astro + React コンポーネント
Vibeが生成するサイトは、Astro(高速な静的・ハイブリッドフレームワーク)+React コンポーネントで構成される
● プロジェクトのコードに直接アクセス可能(Codeタブ)
Vibe Editor には “Site / Dashboard / Code” の3タブがある
Codeタブでは、AIが生成したコードを直接確認・編集できる
● Wixのビジネス機能(EC / 予約 / 決済など)と統合できる
eコマース、Booking、Payment など Wix のバックエンド機能が利用できる(※対応状況は後述)
1-2. Wix Vibeの画面構成(公式仕様)
Wix公式によれば、エディタは以下の構成になっています。
Site タブ:ページの構造・配置・レイアウト確認
Dashboard タブ:コレクション(CMS)などデータ管理
Code タブ:生成コードの編集
右側のChatパネル:AIへの指示・問い合わせ
1-3. 動的コンテンツ(CMS)の対応
公式ヘルプセンターより:
CMSコレクションを作成し、動的ページにデータを流し込む構造をサポート
コレクションにデータを追加するだけで、サイト側が自動反映する仕組み
1-4. ドメイン仕様(ここは重要)
Wix Vibe には、他のWixサイトと異なる特有のドメイン制限があります。
公式ヘルプによると:
● 接続方法は「ネームサーバー接続」のみ
ポイント接続は不可。
● サブドメインは使用不可
sub.domain.com のような接続には現時点で対応していない。
● 一つのVibeサイトに接続できるプライマリドメインは1つのみ
セカンダリドメインは非対応。
1-5. 各種アプリ・ビジネス機能の対応状況(2025年時点・公式発表ベース)
以下はすべて Wix 公式ヘルプの “Feature Requests / Status” に基づく内容です。
対応(または利用可能)
Wix Payments → “Launched”(利用可能)
Wix Stores(EC) → サイト作成時の blueprint 選択で対応(途中追加は不可)
未対応(または開発中)
Wix Forms → “Planned(計画中)”
Wix Events → “Planned(計画中)”
Pricing Plans → “Working on it(開発中)”
Bookings → 要望ステータス(対応時期未定)
Automations → 要望ステータス
コラボレーションについて
サイトへの招待は可能だが、Vibe Editorの編集権限は現在オーナーのみ
1-6. 現在のWix Vibeは「ベータ版」であることが公式に明記
Wix Ecosystem ドキュメントでは “Wix Vibe is currently in beta” と明記
=つまり仕様変更は前提という事になります。
② ここから先は「実際に使ってみた所感」
2-1. “日本語プロンプトでも問題なく動作している”という実体験
公式ドキュメントでは対応言語は明記されていません。しかし実際にWixerDesignで使ったところ、
サイト生成
ページ追加
デザイン調整
CMSの設定
コードの生成(React component)
すべて日本語プロンプトだけで成立している。
2-2. 提案・プロトタイプ制作のスピードが桁違い
Vibeを使うと、数分で「プロトサイト(仮サイト)」が出来上がる。
ワイヤー
トップデザイン、下層デザイン
配色・タイポグラフィ
ページ構造
サンプル文
レイアウトブロック
ここまで「まず形にする」工程が時短で終わる。
一瞬で終わるではなく、時短で終わると書いたのは生成にある程度時間がかかります。
しかし制作会社としてこれは圧倒的な武器で、“提案のスピード” と “説得力” が飛躍的に増す機会だと思います。
2-3. 本番品質に仕上げるには、AIではなく“人の判断”が必須となる理由
Wix Vibe は、プロンプト次第で「叩き台としては極めて優秀なプロトタイプ」を生成できます。しかし、そのまま本番サイトとして運用レベルに乗せるには、AIでは到達できない領域が必ず残ります。
理由は、AIが扱えるのは「言語化された情報」までであり、本番サイトには 戦略・意図・背景・優先順位 といった、非言語の判断が不可欠だからです。
WixerDesignがプロとして本番品質に仕上げる際に求められる“人間固有の役割”は以下の7つに集約できます。
① 目的と優先順位の決定は人間の仕事
AIは案を出せても、「何を最重要にするか(売上・採用・ブランド・運用)」 といった企業固有の優先順位は決められません。
② 企業特有の事情や背景はプロンプトで完全には表現できない
社内文化、体制、ステークホルダー事情など、非言語の背景 をAIは理解できず、判断材料にしにくい。
③ 情報設計(IA)は“事業理解”が前提になる
どんな情報をどの順序で配置するかは、ビジネスの構造・顧客心理の理解 が必須で、AIの提案だけでは不十分。
④ SEO/GEOは全体設計が重要で、AIは“最適案の選択”ができない
AIは候補を出せるけれど、「どの施策を採用するか」 の判断はサイト目的によって異なる。
⑤ ブランド表現は“その会社らしさ”の翻訳作業が必要
AIは一般的な最適解を返すため、固有のブランドトーンや世界観の再現 は人の最終調整が欠かせない。
⑥ UI/UXの最適化は“現場の感覚値”が必要
ボタン配置ひとつでも、離脱率やユーザー心理への影響を見て微調整する作業はAIだけでは判断が難しい。
⑦ 運用・更新のしやすさは企業ごとに違う
AIはサイト構築はできても、社内運用フロー・権限管理・ミス防止設計 などは読み取れないため、人間の設計が必要。
■ まとめ
AIは「案を出す」「構造を形にする」能力が非常に高い。しかし、本番品質に求められるのは、
目的の優先順位付け
企業固有の文脈理解
戦略設計
調整・取捨選択
運用設計
といった、“その企業のための判断”。
だからこそ、
AIで生成 → 人が判断して仕上げる
この二段構造が、現実的で最も品質を担保できる方法。
2-4. Wix Vibe・Wix Studio・クラシックエディタの住み分け
Wix Vibe を実際に使って感じたのは、Wixの3つの制作環境の役割がより明確に分かれてきたということ。それぞれが得意とする領域は次の通りです。
◆ Wix Vibe(AIエディタ)
向いている領域
0→1 の高速プロトタイプ
MVP(最小実用サイト)
LP・小規模サイト
AIと一緒に形を作りたいケース
コード編集+Wix機能統合の“ハイブリッド構築”
特徴
会話型プロンプトでサイト構築が一気に進む
Astro+Reactでコード編集も可能
プロトタイプ制作が圧倒的に速い
ベータ版のため機能制限あり(アプリ・サブドメインなど)
◆ Wix エディタ(クラシックエディタ)
向いている領域
小規模サイト
早く簡単に作りたい案件
デザインより運用重視の個人サイト/店舗サイト
コーディング不要のライトユーザー向け
特徴
ノンデザイナーでも扱いやすいUI
シンプルな更新・管理
テンプレート数が多い
Studioよりも自由度は低いが、圧倒的に習得が速い
特に店舗系・個人事業主の案件では、クラシックエディタが依然として最適なケースも多い。
◆ Wix Studio(次世代エディタ)
向いている領域
大規模サイト
多階層構造/複雑なUX
カスタムレイアウト・アニメーション
本番運用を見据えた“企業サイト”制作
特徴
高いデザイン自由度
レイアウト・レスポンシブ制御が圧倒的に扱いやすい
プロジェクトを横展開しやすい(チーム制作向け)
データセットやコレクション連携も強力
大規模〜中規模の本番制作は、現時点ではStudioが最も安定。
2-5. 制作会社にとってVibeは“競争優位の源泉”になる
特に強いのはこの2点:
● 提案プロセスの高速化
提案スピードは競争力。AI生成を入口にすることで、視覚アウトプットのある提案 → 受注率向上 に直結する。
● 効率化しつつも品質を落とさないワークフロー
AIに任せる部分人がやる部分を明確に切り分けられるようになる。
WixerDesignのように伴走型・目的設計型の制作会社にとって、Vibeは明らかに「プラスの武器」。
③ まとめ
Wix Vibeは“AI × 専門家”の時代を象徴するツール
Wix Vibe はまだベータ版ではあるものの、
AI生成
コード編集
CMS
ビジネス機能統合
という4要素を一つにまとめた、まったく新しいサイト制作体験を提供しています。
特に印象的なのは、
「AIがサイトを作る」ではなく、「AIと一緒に作る」感覚が実務レベルに来たという点。
WixerDesignとしても、
提案フェーズ
MVP構築
プロトタイプ
小規模サイトでは積極活用する価値があると判断しています。
一方で本番サイトでは、情報設計・SEO・GEO・ブランド構築・運用設計など、人間の専門性が不可欠であることはむしろ強くなっている。
参考程度になりますが、WixVibeで作成したウェブサイトのURLを貼っておきます。 あくまで仮想のウェブサイトになります。 https://my-site-ces0jnso-wixerdesign.wix-vibe.com/


